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2008年6月17日

2008/06/17

居酒屋タクシーの件

深夜帰宅のタクシーで、ビールやおつまみの接待を受けていたことが明るみに出て、タクシー利用を自粛しているところもあるらしい。
で、こんな記事を見つけた。
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20080616dde012040005000c.html
バッシング派の若林氏、擁護派の寺脇氏、みたいな構図になっている。

一口に言えば若林氏は特殊法人(今の独立行政法人)に勤務して、そのひどいありさまを目撃した所からジャーナリストになった人であり、寺脇氏は文科省の官僚として霞ヶ関の内部である程度登り詰めた人である。記事における意見の対立を見る時、まずはそういった二人の背景の違いを理解しておく必要がある。

私は特殊法人に勤務していたことがあるので若林氏の言っていることは理解できる。確かに、特殊法人というところは金を使うために用意されたかけ流しの温泉みたいなところであり、節約とかそういった概念はないに等しい。タクシーチケットはふんだんに使えるし、本省から役人が来たら公用車で観光地に案内して、その後は寿司屋に連れて行って接待するのがお決まりのパターンだった。
その金がどこから出ていたのか具体的には知らないが、リッチな組織であったことは間違いない。だから公金に対する態度について、若林氏の指摘、糾弾はもっともであると思う。だが、特殊法人への出向を終えて本庁(県庁)に戻ると、そこは一転してやりくりに苦しむ自治体であり、特殊法人とは全く別の世界だった。特殊法人こそが「特殊」な世界であるというのが周囲の認識だった。

県庁舎につけられていた愛称は「不夜城」で、文字通り夜遅くまで煌煌と電気がついていた。
ある組織に配属されていた時、徹夜で仕事をしていた職員も目撃した。本人の要領が悪いというのもあるだろうが、上司から”無茶な”要求を出され、嫌でもやらなければならない状況に追い込まれたこともあっただろう。私も一度、ある上司の機嫌が悪かったおかげで、夜中の二時までお仕置き残業をさせられ、タクシーで帰ったことがある。

私は国家一種試験を受けた時、霞ヶ関の官庁をたくさん回って現役官僚からいろいろ話をきいたが、国会のあるときは答弁の準備をしなければならないから、遅くなってしまうという話を何度か聞いた。これは自治体でも同じで、議会があるときはそのための対応が必要になり、遅くなることもあるだろう。また、台風が接近すると土木系の部署の職員は一定数の待機を命ぜられるし、夜中に警報が解除になったらタクシーを使うしか帰るすべがない。
そんなわけで、真面目に仕事をしたが故にタクシーを使わざるを得ない時があるのも事実だ。
その点では寺脇氏のいう通りである。

つまり公的組織といってもピンキリであり、実態は様々なのである。それを十把一絡げに評価しようとすること自体そもそも無茶だ。けれども一般の人はそういうことは知らないから、何となく感情に流されてバッシング側に回ることが多いだろう。

恐らく、深夜帰宅が常態化していた霞ヶ関の官僚にとって、こういうタクシーに乗った時というのは、仕事が終わってやっと一息つくことができる解放の瞬間、ほっとするひとときだったに違いない。その時ビールやおつまみが出たら、嬉しくてもらってしまうというのは理解できる。
接待されたり、金品を受け取ることを当然と考えているのは問題だが、そうではなく、真面目に公のための仕事をして、その苦労をねぎらってくれる人の好意をむげに断るのも悪い、というのがそもそもの始まりだったのではないだろうか。そう思いたいし、そうであって欲しいと思う。
だが、それがタクシー業者の甘い罠だったということになるのだろうが。

結局、公務員というのは仕事から解放された後も外部の人間には心を開くことが許されないのだ。その身分ゆえどこまでもついて回るこの辛さ、しんどさを想像してみて欲しい、とは思う。
その重さに耐えられる人しか、この職業につくべきではない、ということになるのだろうが、実際人間は弱いものであり、その倫理感を支えるモチベーションが重要になってくる。

だが社保庁の体たらくを見ればわかるとおり、今の公務員制度はその点で大いに問題がある。
公務員が意欲を持って仕事に取り組み、組織として力を発揮できるよう、一刻も早く、制度改革を実現すべきなのである。

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